緑内障外来の現況

緑内障部:吉野 啓、稲見 達也
栗原 崇、堀江 大介

緑内障班は吉野先生をチーフとし、私稲見と栗原先生に加え、今年4月より新たに堀江先生を加えて計4人という豪華(?)布陣となりました。外来では毎週水曜(吉野)、木曜(稲見、栗原)に緑内障専門外来を設け、他施設から御紹介頂いた症例の診断、治療方針を複数医にて検討しております。我々緑内障班の診療モットーは引き続き「正しい病型診断に基づいた治療を」ということであり、原発性か続発性か、開放隅角か閉塞隅角かというカテゴリーを明確にしたうえで、薬物の選択、術式の決定に臨むということを念頭に常に意識して日々診療を行っております。当たり前のことと思われるかもしれませんが、実際の臨床の場ではこの点を明確にせず、漫然と降圧剤を使用しているうちに重症化しているケースが散見されます。その上で外科的治療が必要な場合は可能な限り迅速に対応しております。

平成19年度の手術件数は104件で、内訳は線維柱帯切除術(Trabeculectomy)63件、線維柱帯切開術23件、隅角癒着解離術18件(白内障同時手術を含む)となっており、ここ数年増加の一途を辿っていた手術件数にブレーキがかかった状態です(図1)。特に我々の最大の敵である血管新生緑内障に対するTrabeculectomyは、ここ数年飛躍的に増加していたのが初めて減少に転じました。これは一昨年より導入されたアバスチン(ベバシズマブ)の効果と考えてよいと思われます。増殖糖尿病網膜症、網膜中心静脈閉塞症等に対するアバスチン硝子体内投与の有用性は今さら述べるまでもありませんが、十分な汎網膜光凝固を追加する時間的余裕を作れることにより、結果的にTrabeculectomyを施行するところまで至らないケースも増えてきている印象です。

図1

当院でのTrabeculectomy施行時のマイトマイシンC(MMC)の導入は比較的遅かったわけですが、良好な眼圧コントロールと引き換えに無血管濾過胞による諸問題(房水漏出など)が散見されるようになってきました。結膜切開や強膜弁のデザイン、縫合の方法などを工夫して極力無血管濾過胞ができないような手術を試みていますが、まだ試行錯誤が続いています。そのような観点からも、今後の緑内障治療はいかにTrabeculectomyに持ち込まないようにするか、というのがむしろ重要になってくるのではないかと考えています。 その意味でも血管新生緑内障の治療におけるアバスチンが大きな位置を占めてくるものと思われます。しかしながら華やかなアバスチンの影に隠れがちですが、十二分なPRPこそが極めて重要であることを改めて強調しておきたいと思います。

当アイセンターでは網膜硝子体領域の患者さんが非常に多いので、血管新生緑内障は避けては通れない道ではありますが、よりよい治療成績を目指して今後も邁進していく所存でございます。今後とも皆様の御協力をよろしくお願い申し上げます。

Back