◆私と白内障研究の出会い( 藤原 隆明 )       ------------------------- <1・2>
◆イベント情報                   --------------------------- <3>
◆眼科レジデントが入局しました!          --------------------------- <4>
◆特別発表                      -------------------------- <4>
◆外来表                       -------------------------- <4>
◆編集部より                     -------------------------- <4>

私と白内障研究の出会い
藤原 隆明

 教室・アイセンターの皆様のお世話で去る3月1日(水)に大学院講堂で最終講義をさせて頂きました。生れて初めてのことですっかりあがってしまい、何を喋ったのかも覚えず夢中のうちに約1時間の講演を終えました。纏まりのない内容になってしまったかと反省しています。そのときのことを少し振り返ってみました。
 タイトルですが、「白内障の語り」とは、英語で言うと、「cataract narrative」というほどの意味になりましょうか。少し気障なタイトルでしたが、私の日頃の「白内障」に対する思いそのものから出たものです。講義の冒頭でも触れたように、水晶体はその生涯を通じて成長・発達を続け、それを構成する水晶体線維細胞は全て、細胞としての核は喪失していきながら次第に中心へと押し込められて、固い核部の形成に与かる訳です。この間、細胞は一生の間、水晶体の外、従って眼外にも勿論のこと出ることがありません。ですからその成長過程で生じた病的変化は、何らかの異常所見として捉えられる(生体では観察される)可能性がある訳です。ある意味では、樹木の年輪形成の経年変化に似るものがあるといえるかもしれません(ナイムヘン大学のブレメンダール教授はそのような安易な?表現は批判していますが)。そしてここにいう異常所見とは、そのほとんどが水晶体混濁イコール白内障、ということになると思います。
 その観察法として、散瞳下における細隙灯顕微鏡(スリット)を縦横に駆使しての斜照法・徹照法の両法による観察が必須であることを述べました。臨床の場における検査は、診断上の精度が高く、かつ須く全ての患者にとって侵襲が少ないものでなければならない訳で、トロピカミド(ミドリンP)点眼による両眼の散瞳スリット検査はその点でも必須かつ十分のものです。そして水晶体混濁所見の記録・定量解析に使用している我々の機器についても若干紹介しました。この際には、微細な前白内障性変化(水胞・水隙・褶隙など)の発見が非常に大切です。
 ここで、近年の遺伝子診断法に拠らずとも、その特徴的な白内障の存在から、全身的疾患の診断が確定できる一例として、筋強直(緊張)性ジストロフィー(myotonic dystrophy)のほぼ全例に診られるいわゆるミオトニー白内障(myotonic cataract)について実例を紹介しました。神経・筋症状などが認められ無くとも、この所見(Vogt型とFleischer型混濁)さえあれば、水晶体をスリットで覗くのみで、本症の確定診断が眼科医によって可能です。しかも手術適応のことも含めて本症を発見できる頻度は日常意外に高頻度です。是非診断上の武器に加えましょう。またより一般的なところでは、高血糖を呈する糖尿病者の水晶体では、発症時期やその後の経過により時とともに水胞(vacuole)変性に始まる特異な水晶体混濁を呈してくることが多いことから、日頃、若い諸君には、「糖尿病者(より正しくは高血糖者というべきでしょうが)の多くは、眼科医の精密な水晶体観察によって発見できること!」を力説してきました。こうして、「眼も診れるgeneral physician」を志すことの大切さを折に触れ説いてきた心算です。
 白内障というこのあまりにもありふれた眼疾患が私のいわばライフワークになったのは、1965年に、出張していた地方の病院から母校の慶応の眼科学教室に呼び戻されて間もなく、学位のテーマとして「水晶体のグルタチオン(GSH)」を与えられたときに始まります。このグルタミン酸・システイン・グリシンの3つのアミノ酸から成るトリペプタイドが、フリーラジカルに対するscavenger systemをはじめとして、眼の代謝において重要な働きをしていることが解明されはじめたころのことで、Arch. Ophthalmol.に載ったJin H. Kinoshita(故人)のGSHに関する総説を当時夢中になって読んだことを憶えています。その微量定量法やあらゆる種類のGSH測定法を独学で試みながら、動物の実験的白内障や当時の水晶体全摘出という術式の関係で入手できたヒト白内障のwhole lensでその測定などを行ないました。その後、東海大学に移ってからは、水晶体の代謝を司る重要な周囲の生体環境としてヒト眼房水組成成分(特にglucoseの変動ついて)に興味を持ち、とりわけ糖尿病白内障と加齢白内障との類似性に着目して研究を行なってきました。そして加齢とともに出現してくる糖認容力の低下が、加齢白内障の発症・進行にも影響してくることを示してきました。ここで次は、混濁そのものの性質に挑まねばならないと思うに至りました。
 私の研究生活でのいわば「終の棲家」となった本学に1983年に移ってからの白内障研究は、以上の経緯から臨床的なものに絞り、当時の矢田・山本両助手をはじめほぼ総ての教室の諸君とともに、専ら白内障の終極である水晶体蛋白の変性像たる水晶体混濁像の形態的特徴の把握から、疫学的に危険因子を検索(第1次予防)し、また個々の症例における視機能障害の評価(第2次予防)や、疫学的研究の最終目標(第3次予防)である幾つかの抗白内障薬の開発(治験)に携わってきました。臨床医として、水晶体混濁の発症と進行の阻止への取組が必要であると強く意識するようになりました。こうして次第に「白内障の画像解析」にまで踏み込んでいった訳ですがこれについては、また機会を改めて述べてみたいと思います。
 これまでたいした研究もできなかったのですが、40余年前に恩師から出された白内障研究に対する執念だけは持ち続けていきたいと思っています。引き続きご指導下さい。



藤原教授最終講義 2006/3/1 於 杏林大学大学院講堂



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イベント情報

<第45回東京多摩地区眼科集談会> 14:00〜16:30 場所:杏林大学・大学院講堂
   10月30日(土) 教育講演:「これからの硝子体手術・小切開25ゲージ硝子体手術」
    門之園 一明先生 (横浜市立大学附属市民総合医療センター 眼科準教授・部長)

<第8回西東京眼科フォーラム>  19:00〜21:00  場所:吉祥寺第一ホテル若草の間
   11月22日(水) 特別講演:「未定」
    岡田アナベルあやめ先生 (杏林大学医学部眼科学教室助教授)

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眼科レジデントが入局しました!



西川洋平先生

中島史絵先生

宮澤顕子先生

二宮夕子先生

柳沼重晴先生

特別発表

平成18年4月13日平形明人先生が長年の病理研究の功績を讃えられ日本眼病理研究会より、
第8回学術奨励賞を受賞しました。おめでとうございます!

外来表


編集部より
ご定年を延長され、本学保健学部長を2期4年間務められました藤原隆明先生がご退官なされました。先生は杏林大学へ助教授として赴任されてから3年、主任教授として16年、さらに兼担教授として4年、計23年の長きに亘り教育の臨床、教育、研究のご指導をいただきました。温厚ながら実は一面頑固な先生にはいつも父親のように暖かく教室員を見守っていただきました。心よりご苦労様でしたと御礼申し上げます。今後も名誉教授として教室員はお付き合いいただくことになります。(T.H.)

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