◆ 眼窩外来の活動 (忍足 和浩) -------------- <1・2>

◆ Eye Center Photo Album    -------------- <3>

◆ 外来予定表            -------------- <4>

◆ アイセンターイベント情報    -------------- <4>

◆ 編集部より           -------------- <4>

 

眼窩外来の活動
忍足 和浩

眼窩部門
1997年7月に眼窩外来を立ち上げ、blow out fractureなどの外傷、炎症性疾患および眼窩腫瘍を専門に症例を集めてまいりました。ここでは、今までの経験から気づいたことを述べてみたいと思います。

 

外傷
眼窩骨骨折、涙小管断裂、視神経管骨折が多く、眼窩骨骨折は年間100例以上が外来を訪れます。内壁骨折などは無症状なことが多く、CTを撮って初めて確認できたものも少なくありません。下壁骨折より多い印象を受けます。下壁骨折は手術適応になるものが多く、全体のうち約1割で全麻下にてシリコンプレート留置を行っております。小児の眼窩底骨折は線状骨折が多く、下直筋が骨折部に絞扼されて壊死を起こす可能性が高いため、緊急手術の対象になります。3例ほど行いましたが、術後も強い眼球運動制限が残ってしまいます。

当院は救急救命センターが活発であるためか、頭蓋部外傷の患者さんが多く搬入されます。このうち、頭蓋底付近の外傷では視神経管骨折を伴っているものが多く、15例近くを経験しました。視束管撮影では確認できず、CTでもはっきりと描出できないものが多く存在します。我々の経験では、RAPD陽性で、後篩骨洞または蝶形骨洞内に出血が存在しているものは視束管骨折があると考え、ステロイドの大量投与療法を行っております。劇的に改善する症例は少ないですが、比較的経過は良いようです。ただし、頭蓋底の外傷は脳内の他の部位に強い傷害をきたしていることが多いため、生命予後不良なものが含まれています。
涙小管断裂は顕微鏡下に直視下で断端部を検索し、シリコンチューブを留置します(pig tail probeは禁忌とされています)。12例ほど行いましたが、ほぼ全例で断端部を確認できました。特に緊急性はなく、受傷後1ヶ月経過した症例でも確認できました。
小児の眼球打撲では、単なる眼瞼打撲と思っていても、時として脳内に障害がおよんでいる場合があるので要注意です。

 

炎症性疾患
眼窩蜂窩織炎、外眼筋炎、視神経炎が多く、重症例は入院で管理しています。眼窩蜂窩織炎は鼻性より眼瞼の霰粒腫などから波及したものが多くみられます。
抗菌薬は組織移行性の高いファーストシン(第4世代セフェム)を主に用いています。近年、MRSAなどの耐性菌が問題になっているので、これらに禁忌であるイミペネムは初回からは使用しておりません。
外眼筋炎はステロイド内服で再発が多いため、ステロイドパルス療法を行っております。症状の軽減が早いだけでなく、再発も少ないです。
視神経炎はステロイドパルス療法が中心ですが、再発例にはステロイド(ケナコルト)1 ccの深部テノン嚢下注入を行っています。特に、高齢者には全身への影響が少なく、また視力改善が早く再発も無いため、有用な療法と考えております。

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 腫瘍
バリエーションが多く、様々な種類のものが集まってきています。涙腺腫瘍および悪性黒色腫以外は外来手術での生検で診断確定しております。臨床経過および画像診断(MRI・CTによる腫瘍の位置や性質)を考慮して、生検するか判断します。腫瘍の内訳は、悪性黒色腫5例、MALT type lymphoma 15例、NK-T cell lymphoma 1例、脂腺癌3例、扁平上皮癌3例、眼瞼schwannoma 2例、lymphangioma 2例、基底細胞癌2例、血管腫2例、直腸癌転移2例、乳ガン転移1例、Merkel cell 2例、acinic 細胞癌1例、眼窩骨膜下嚢胞3例、涙腺腫瘍1例、頭蓋底melanosis 1例、分類不能1例です。最近はMALT type lymphomaが多く、放射線療法および化学療法を行っております。眼窩初発のNK-T cell lymphomaは世界的にも珍しく、診断を早期につけたにもかかわらず病態の進行が早く生命予後不良でした。また、直腸癌の転移は眼窩部の腫瘍生検から原発の直腸癌が見つかった極めて稀な例です。これらは生検から確認できたもので、次の管理方針を決めるために生検は極めて重要と思われました。今では臨床経過と画像所見から腫瘍を疑ったらすぐ生検を行うようにしています。最近は、何でも腫瘍に見えてしまいます。
これらの悪性腫瘍は単科で管理することは困難であるため、各科と協力して管理しております。頭蓋底に進展している腫瘍や眼窩尖端部から視神経管にかけての腫瘍は脳外科および形成外科、眼瞼の広範囲の再建を必要とするものは形成外科、lymphomaは血液内科と放射線科、鼻腔原発は耳鼻科といったように、各科と協力して手術・管理を行っております。特に開頭術を併用した眼窩腫瘍切除は眼球を温存しながら腫瘍摘出を行えるため、術後の整容上の問題点がクリアーできます。前方からのアプローチだと、眼窩内容除去術となってしまい、術後の再建が困難です。頭蓋底からのアプローチの場合、術野も広くとれ、視神経管付近も郭清できるので有用な方法と思われます。ただし、小さい腫瘍で眼窩先端部にある場合は、クレーンラインの骨切りを眼窩上縁に少し広げた方法で対処できます。その際は、コントラバス型の顕微鏡が必要になります。通常の眼科の顕微鏡では不可能です。

以上、眼窩部門の紹介と一部気づいたことを書いてまいりました。このほかにも、眼瞼内反や下垂、眼窩内異物除去(MIRAgel除去を含む)も行っています。一人でやっているため、結構きつい部分もありますが、他科と仲良くなれるので、いろいろな知識が増えてきます。皆様も是非眼窩に興味を持ってください。

 

 

左眼窩腫瘍

左開瞼困難で来院。CTにて骨破壊像がみられ、悪性腫瘍を疑い生検施行。病理で印環細胞癌が認められたので、腺癌を疑い全身検査施行。上部消化管や肺、胸部に問題なく、大腸ファイバーにて直腸に腺癌を認めた。

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第41回日本白内障学会

6月21日〜23日、第41回日本白内障学会(会長:藤原隆明・杏林大学)・第17回日本眼内レンズ屈折手術学会(会長:稲富誠・昭和大学)が東京ビッグサイトで行われました。2201人の参加者があり、盛況のうちに閉会しました。


左) 藤原隆明教授 右)稲富誠教授


右端) Beebe教授(ワシントン大学)。白内障学会の特別講演をされました。永本敏之助教授留学中の上司でした。

藤原隆明教授・杏林大学保健学部長就任祝い

平成14年4月1日付で藤原隆明教授が杏林大学保健学部長に就任しました。同日付で樋田哲夫教授が杏林大学医学部眼科学教室主任教授に就任しました。また永本敏之先生、岡田アナベルあやめ先生が助教授に昇進しました。6月23日の就任祝いパーティー(センチュリーハイアット東京)には杏林大学同門生105名が参加して行われました。

 
今年の新入医局員と両教授。

 

※ 山本晃先生は10月1日付をもって学内講師に昇任しました。

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外来予定表(2002年10月〜)

アイセンター・イベント情報

●アイセンター・オープンカンファレンス
国内外の先生にインフォーマルな場で臨床、研究テーマについて講演していただくシリーズです。外来棟の10階第2会議室で6:30PMから行われます。アイセンター外の先生方も是非ご参加ください。

・ 10月 9日(水) 「網膜と視神経の血流:病態・薬物・手術による影響」(仮題)
木村 至先生  (慶応大学医学部眼科)

・ 11月 6日(水) 「Current Approaches to Retinoblastoma Management」
Dr. Shizuo Mukai(ハーバード大学)
(場所は杏林大学・大学院講堂、ご講演は日本語で行われます)

・ 11月 13日(水) 「ERG入門」 
大出 尚郎先生 (慶応大学医学部眼科)

なお、11月20日(水)に予定しておりました桜庭知己先生の講演は都合により中止となりました。

 

●西東京眼科フォーラム(専門医認定事業・2単位)
  11月16日(土) PM3:30から 杏林大学大学院講堂
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9月24日、杏林アイセンター特別講演
Harvard大学 Donald Dユ Amico教授 (Experimental and Clinical Advances in Retinal Vascular Surgery)

 


8月1日、米軍横田病院の新院長が本学理事長とともに、アイセンターを見学されました。

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編集部より
 忍足先生は慶應大学から杏林の網膜硝子体グループにフェローとして加わり、その後も術者として、また十分に信頼できる助手として、杏林大学に残ってくれました。もともと興味を持っていた眼窩部門を立ち上げて立派なものに発展させてくれました。近来稀な努力家であり、仕事ぶりです。あとはもう少しまともな文章がはじめから書けるといいんだけど。今回は写真の多いレターになりました。   (T.H.)

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