◆網膜硝子体手術班から    --------------------------<1>
◆ VR班のTopics       -----------------------<2・3>
◆ アイセンターイベント情報  --------------------------<4>
◆ 編集部より        --------------------------<4>

 

 

網膜硝子体班から   平形 明人

 1999年の新外来棟完成とともにアイセンターの名称を冠するようになって4年目に突入しました。皆様のご協力と努力によってコンピュータ−ネットワークの進歩、low vision外来の活動、専門外来の充実、外来手術件数の増加など少しずつ発展してきました。そして、多摩眼科集談会に加えてアイセンターオープンカンファレンスや西東京眼科フォーラムあるいはこのNewsletterを介して他施設の多くの先生方とコミュニケーションできる機会が増えました。今後さらにこのアイセンターが眼科医療に貢献する仕事の場になるように努力しますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
 さて網膜硝子体手術のスタッフも少しずつ変化し、多くの症例を担当しております。本号ではスタッフ紹介をかねて、各人に次のテーマを書いていただきました。樋田教授には「なぜ網膜硝子体を選んだか」、三木先生には「留学記」、小田先生には「当科の網膜手術統計」、忍足先生には「術後眼内炎マニュアル」、杉本先生と田村先生には「最近の硝子体手術器具」です。
 黄斑円孔が後部硝子体剥離を作成してガスタンポナーデで治療できることがわかってから、硝子体網膜界面の病態や硝子体の接線方向の牽引の考え方が話題になっています。滲出性変化でも二次的な硝子体の変化が悪化要因に繋がっている可能性もあります。Optical Coherence Tomography (OCT)がこの病態把握に画期的に有用となっています。当科でも海谷眼科病院のご寄付により便利に使用させて頂き、硝子体手術の適応も判断しやすくなりました。また、硝子体手術の術中所見や効果によって病態がより解明されてきています。
以前は硝子体手術は失明を予防するための最終手段でありましたが、最近はよりよい視力を確保(quality of vision)するために活躍するようになりました。しかし、依然として重篤な疾患も少ないとはいえず、硝子体手術による合併症も怖いものばかりで、その機序が不明なものも存在します。
マカマー先生が「私は硝子体手術のパイオニアの一人かもしれないが、硝子体手術で網膜が復位し視力が改善してもそれで満足してはいけない。硝子体手術を受けた方がそれを通じてどのように日常生活が広げられるかに関心を持ちなさい。」とよくレジデントにいわれていました。硝子体手術あるいは眼科手術全体、そしてlow vision外来の基盤にはこの考え方が大切です。
 多くの網膜硝子体疾患の難題に向かって、以上のスタッフが若い先生たちと「自己主張と謙遜の徳」のバランスのもとに協力し合って挑戦していきますので、患者さんのご紹介など宜しくお願いいたします。

 

手術を要した網膜硝子体疾患  小田 仁

 

 

 

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VR班のTopics

なぜ網膜硝子体を選んだか   樋田 哲夫

 

 慶應の眼科入局したのは故植村恭夫教授が赴任された‘73年だった。教授の号令で秋から訓練システムが変わり、幅広い臨床知識と経験を早期に身につけさせようとする教授の下で勉強できたことは、きつかったが幸せなことだった。手術も早くから経験させてもらえた。米国から帰国したばかりの秋山先生のされる網膜剥離手術に間もなく魅入られ、「卒業3年間における網膜剥離手術の経験と成績」という報告をさせてもらった。入局2年目にパリで国際眼科学会があり、マイクロサージェーリーのシンポジウムに出席させてもらった。
日本から出席されたのは著名な眼科手術医たちばかりで、ただ一人若僧が混じってのツアーだったが、旅行中に多くのことを学ばせていただいた。この時に、マカマーの硝子体手術のフィルムを見て感激し、「これだ!」と帰国後興奮して話をしても医局ではあまり相手にされなかった。
 現状から飛び出さなくては、医師としてというよりも自分の人生がつまらなくなる、というような衝動に駆られた時期が二度あった。一度目は入局3年を過ぎた頃で直接マイヤーシュビッケラート教授に手紙を出して留学を決めた。ドイツで初めての一人暮らしをし、ヨーロッパ内を色々と旅行したりして楽しんだ。手術の助手をかなりさせてもらったが、特に教授の再手術時のプレパレーションやバックル移動のしかたは勉強になった。脈絡膜メラノーマや網膜芽細胞種も多数みてきた。硝子体手術はほとんどされていなかったのが残念だった。周囲の若い医師には日本の医師ほど熱意を感じず、1年の留学で十分という印象だった。帰国する時には「専門は網膜手術」という決意は揺ぎないものになっていた。二度目の衝動は卒業後10年後で、この時もかなり急にマカマーのリサーチフェローとしてデューク大学に留学を決めた。紙面の関係でこの時の話は別の機会に。

 

白内障術後眼内炎への対処方法  忍足 和浩

 白内障術後で急激な視力低下を伴う強い炎症をみた場合、術後細菌性眼内炎と診断し、早急に対処する。炎症は時間ごとに悪化するため、軽度であっても油断がならない。眼痛(必ずしも伴わないことがある)、前房のフィブリン析出、前房蓄膿、毛様充血が確認できるが、この所見からは強毒菌か弱毒菌かの判断はつかない。眼底が透見できない場合、B-mode echoで硝子体混濁や網膜剥離の有無を確認する。Echoによる脈絡膜の肥厚およびERGによるb-waveの減弱は予後不良のsignである。
 炎症の主体が硝子体であるため、前房洗浄は効果が無い。しかるべき施設へ搬送するまで時間がかかると判断したら、まず、硝子体をtapし、培養に出す。次に硝子体腔中にバンコマイシン1 mg / 0.1 ccとモダシン2.25 mg / 0.1 ccを注入する。抗菌剤の全身投与のみでは効果がなく、硝子体手術が有用である。

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VR班のTopics
自己紹介  三木大二郎

 1988年杏林大学を卒業し、眼科医局に入局しました。2年間の研修と1年間の専攻医として計3年大学で研修を積ませていただいた後、公立阿伎留病院に1年出張しました。入局5年目に大学に戻り、網膜硝子体班の初代フェローとならせていただきました。当初は樋田助教授、前田先生(現オリンピアクリニック)と私の3人しかいなく毎日毎日緊急手術ばかりでした。樋田先生も毎晩遅くまで緊急手術に明け暮れていましたが、何処でどうやって時間を作っているのか、しっかりと稽古事はされていたようです。平形先生が加わり、慶應や他大学からもフェローをとるようになり、徐々に網膜硝子体班の人数が増えて楽になってきましたが、反面若いフェローの先生達は経験する症例数が減っています。あの当時を思い出すと、忙しいながらも非常に沢山の経験を得られたことに感謝しています。これからもよく学び、よく遊び頑張っていきたいと思います。
 1997年10月から1998年9月まで米国Duke大学アイセンターにresearch fellowとして留学させていただきました。Diane L. Hatchell 先生のもと膵臓islet cellの網膜下移植、新しいゲル状の接着剤について研究してきました。と、このように書けば大したもんだと思われがちですが、実際はと言うと、研究は遅々として進まず、毎週毎週カンファレンスでは訳の分からない英語で対抗し何とかその場をしのいでいました。小さな仕事ですが、接着剤に関しては何とか仕事を終わらせることが出来たと思います。留学中にMachemer 教授がDuke大学を引退され、この時Machemer 教授の網膜剥離の最終講義を聴けたことは私のこの上ない財産になると思っています。家族と一緒に留学し、アメリカで第2子が誕生し色々と素晴らしい経験が出来ました。若い先生達もチャンスがあれば遠慮しないで是非留学してみて下さい。

アキュラス600DSのVFC機能について  田村 智則・杉本 敬

 当科で使用している硝子体手術装置アキュラス600DSの機能の1つにVFC(viscous fluid control)モードがありますが、これにより一定の圧力でシリコーンオイル(S/O)や人工房水の注入・抜去ができるようになりました。液体パーフルオロカーボンからS/Oに置換したり、黄斑下血腫などの症例で網膜剥離を作る時に使用しています。
網膜剥離を作る時は、網膜下に空気が入らないように、シリンジ内の空気をしっかり抜いておきます。そして、挿入前には網膜下カニューラの先端からちゃんと水が出ることを確認します。網膜下への注入時には眼圧の調節も必要です。網膜下に空気が入ってしまったら、モードを変更して吸引すればよいのですが、これはなかなか困難です。
フットスイッチでの調節なので、従来のような力ずくの作業がなくなったことが大きな利点です。

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●アイセンター・オープンカンファレンス
  国内外の先生にインフォーマルな場で臨床、研究テーマについて講演していただくシリーズです。5月29日以外は
  外来棟の10階第2会議室で6:30PMから行われます。アイセンター外の先生方も是非ご参加ください。

2月20日(水) 「屈折矯正手術(LASIK) --- 診療の実際と今後の課題 ---」
  根岸一乃先生 (慶応義塾大学医学部眼科)

3月13日(水) 「眼科領域でMRIの有用性」(仮題)
  前田利根先生 (杏林大学眼科非常勤講師 オリンピア眼科病院)

4月3日(水) 「EKCの院内感染対策」
  薄井紀夫先生 (東京医科大学八王子医療センター眼科 東京医科大学講師)

5月29日(水)  「タイトル未定」
  広瀬竜夫先生 (Clinical Professor of Ophthalmology,
  Harvard Medical School and Schepens Eye Research Institute)

場所:杏林大学大学院講堂、6:30 pmから

           

●多摩眼科集談会(杏林大学臨床講堂、14:00〜17:00)

3月23日(土) 特別講演:「AIDSと眼」
  永田洋一先生 (国立国際医療センター眼科)、 生涯教育認定事業2単位

 

Eye Center Photo-Album

2002年1月21に、Massachusetts Eye and Ear InfirmaryのDr. Johanna Seddonを招待し、米国で行われた加齢黄斑変性の進行予防を検討する
スタディー(AREDS)についてお話ししていただきました。生物統計学者であるご主人様も一緒にいらっしゃいました。

・現在網膜硝子体班のメンバーは7名です。緊急手術が多いので大変だと思いましたが、まだ経験症例数が不足と感じているとは一面嬉しい情報です。もっともっと働いてもらいましょう。但し、もう少し研究にも力を入れて貰わないと困ります。尚、外部からのフェロー大歓迎です。
・緊急手術が多い理由は患者さんのニーズに合わせていることが第一の理由です。例えば網膜剥離で黄斑が未剥離ないし、切迫している場合には予定手術には入れず緊急で対処します。外来での手術も少しずつ増えてきています。
・4月1日付で藤原教授は当大学保健学部長となられることになりました。兼担教授として眼科での外来は従来通り行います。主任教授は樋田が交代致します。また、永本、岡田両名も助教授に昇進することが決まりました。 (T.H.)

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