◆情報処理室の紹介 (山本 晃)       ----------------- <1>
◆Faculty自己紹介(篠崎尚史・齋藤博)    ---------------- <2>
◆Topics                   ---------------- <3>
アイバンク・組織バンクの活動               
◆アイセンターイベント情報    --------------------------- <4>
◆編集部より                           

アイセンター情報処理室の紹介   山本 晃

 IT革命と言われるほど情報通信技術は急激な進歩を続け、情報スーパーハイウエイ構想など世界的な超高速情報ネットワークが構築されつつあります。この高速・大量の情報網を最も活用できる分野に「教育」と「医療」があり、どちらにも関係する大学病院としては、情報通信に迅速・柔軟に対応する必要があります。これまで重視されていた医療・教育・研究の3部門の充実に加え、アイセンターでは情報処理の充実のため「情報センター」部門が新設されアイセンター情報処理室が作られました。今回このアイセンター情報処理室の設備を簡単にご紹介致します。
 アイセンター情報処理室は外来棟5階のアイセンター内にあります。写真はこの部屋のパノラマ写真です。OAフロアーで床下には様々な配線がされています。
[映像・音声] 中央手術室・AV室・臨床講堂・外来手術室・眼科外来検査室とマトリックススイッチャーを介した接続がされ、各部屋に映像・音声の配信が可能です。医学部学生を対象にした多元中継LIVE SURGERY授業も行っています。手術の記録媒体はS-VHSからDVに変更中で、学会用ビデオ編集はリニア・ノンリニア(デジタル)に対応しています。
[学会・研究用] Windows・Macintosh・Linuxなど様々コンピューター環境、20台以上の端末、SPSS(統計処理)をはじめ最新のプログラムで、いつでも簡単に統計処理・スライド作成・データーベース構築が出来ます。
[イントラネット・インターネット] メールサーバー・HTMLサーバーを設置、eye-center.orgのドメインを取得し全医局員にメールアドレスを配布しました。医局内の連絡事項はイントラネットのホームページ・伝言板・e-mailで効率的に伝達されています。もちろんインターネットも利用可能です。
[遠隔医療] TV会議を応用した遠隔医療システム(テレミート64)を設置。高画像の動画が送受信可能で、伊地知眼科(鹿児島)・志和眼科(岩手)・東京歯科大学(千葉)との間で、眼科医療における遠隔医療の有用性に関しての実験を行っています。現在実験参加施設を募集中です。
[画像データーベース] 眼底写真、FAG、前眼部写真など高画質静止画像をデジタル化し、データーベースに蓄積しています。近い将来、病院のオーダリングシステム(iCAN)と接続し、電子カルテとしても発展・利用して行く予定です。
今後も高度で最新の情報処理を、誰もが簡単に利用できる施設を目指しています。皆様、是非見学にいらして下さい。
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Faculty自己紹介

篠崎 尚史

 1993年に樋田先生のお力で、非常勤講師にして頂き7年が経過しました。私は米国ケンタッキー大学で生物学、核物理学を専攻して帰国後、日本両生類研究所の主任研究員を勤めながら、筑波大学応用生物化学系にて遺伝子の研究を行い、その後、東京歯科大学市川総合病院の角膜移植センター長として赴任しました。現在、市川総合病院に角膜センターが独立し、アイバンクと角膜移植センターの2部門を運営しております。平成12年度の文部省、バイオベンチャー研究開発拠点に選定され、また、厚生省のミレニアムプロジェクトで再生医療の研究を5年間に渡り進めることになりました。杏林大学では平成11年に「臓器・組織移植センター」が開設され、コーディネーター部長の職を仰せつかり臓器移植、組織移植に力を注いでおります。
 アイセンターでは、現在、「アイバンク」の設立に向けて準備中です。我が国では危機的なドナー不足により、角膜移植でしか視力を取り戻せない患者さんに対して、移植ができない状態です。アイバンクの設立により欧米型のコーディネーターを配備して医療機関の啓発を実施することで、この状態を打破できると確信致しております。今後の角膜部門の発展に貢献すべく全力で邁進する所存でございます。

 

齋藤 博

 はい、齋藤です。外来医長です。医長というと聞こえは良いですが、外来で起きるクレームの処理から器械の故障、保険請求にいたるまで、眼科医局の総務課といった仕事をしております。そんな私の専門は角膜です。
 本来大学の医局というと教授の専門分野を手助けするものなのでしょうが、私は不忠義者ですね。角膜といってもコンタクトレンズ、ドライアイ、変性症、感染症、角膜移植、最近では屈折矯正手術までかなり幅広くあります。とても1人ではまかないきれず、現在は5年目になる丸山医師と2人でやっており、その他に東京歯科大市川総合病院の島崎助教授に非常勤講師として月1回来ていただいております。
 そもそもなぜ角膜を志したかというと、同期で医局長の三木が網膜硝子体を専門とし、自分は何か他の道を選んだ方が杏林大学眼科のためにはいいのかなと思っておりました。そこに東京歯科大学市川総合病院の坪田先生が「杏林からも人がほしい」という一言に興味をもって、93年に1年間坪田先生の下で角膜の修行をさせていただきました。
 杏林に帰ってきてつくづく感じたことは、角膜のドナーの絶対的な不足で、移植の必要な患者さんを1年以上待たせているという事でした。そんな矢先、杏林アイバンクの話が持ち上がり、その準備も私の大切な仕事になりました。
 アイバンクが設立すると杏林アイセンターがまたひとつ発展します。夢が大きくなっています。

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Topics アイバンク・組織バンクの活動

齋藤 博

 杏林大学では、アイセンター設立と同時に大きな基軸としてアイバンクの設立を目指し、厚生省の内諾を得るところまでこぎつけております。
 現在アイバンクは全国で51施設あり、東京には慶大眼球銀行、順天堂アイバンク、読売光と愛の事業団眼球銀行の3施設があります。日本で角膜移植術は年間1,800件程度行われておりますが、手術待機患者は2万2,3千人と推定されていて、年間1,500人程度増加していると予想されています。しかしドナーの数はここ数年ほとんど変化無く、絶対的に不足しており、今や危機的な状況であることは明白です。多摩地区は人口の多い地域で大学の付属病院や公立病院が多く、アイバンクをつくりアメリカ並の活動を行うことで、ドナーの増加がかなり期待できると考えております。
 アイバンク活動の根幹はコーディネイションであり、角膜移植に関する理解と知識の普及・啓発に協力を求め献眼登録者の拡大を図る必要があります。それにはまず協力病院の開発を行い、近隣の医療機関、老人医療施設で真摯に対応を図るよう心がけていきます。
 斡旋に関する事業としては、移植実施病院を経由して提出される移植希望者の登録事務を行い、提供者から眼球の摘出、強角膜片の作成、角膜の評価を行い、角膜移植実施病院に対して斡旋を行います。このため杏林アイセンターは、献眼者の死亡通知に備え24時間待機となります。
 杏林大学医学部付属病院は我が国有数の高度救急救命センターがあります。この施設には熱傷患者などに使用するためスキンバンクがあり活動中です。将来的にはアイバンクとスキンバンクは連携し杏林大学医学部付属病院臓器・組織移植センターとして活動をしていくことになります。
 アメリカのアイバンクでは年間10万件程度の献眼がありますが、先にも述べましたが日本では1800件程度です。これは人口の比率からしても納得のいく数字とは思えません。ではなぜ日本ではこの程度しか提供がないのでしょうか。以前は宗教的な違い例えば眼球を摘出してしまうと三途の川が渡れない等と言った言い伝えが原因などといわれていました。しかし私たちはそれは違うと考えております。アメリカでは臓器提供の為のコーディネーターの制度が整備されており、臓器提供が得られそうになるとコーディネーターが家族と対面し臓器提供の必要性について、時間をかけて説明します。日本ではそのような制度がまだ未発達ということです。杏林大学の臓器・組織移植センターではこのような移植コーディネーターの育成も視野に入れ、救急救命センターにおいて日本のコーディネーターの第1人者である篠崎非常勤講師を中心に講習会も行っております。
 杏林アイバンクの設立までもう少しというところまでやってきました。
 アイバンクが設立いたしましたら、皆様に改めてご協力をお願いする事になると思いますが、その節は宜しくお願い申し上げます。

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外来担当表

 

●アイセンター・オープンカンファレンス
 国内外の先生にインフォーマルな場で臨床、研究テーマについて講演していただくシリーズが去年の7月から開始いたしました。近々予定している講演をお知らせします。外来棟の10階第2会議室で6:30PMから行われます。この講演シリーズはオープンですので、アイセンター外の先生方も是非ご参加ください。

 11月29日(水)  Dr. Tatsuo Hirose, Clinical Professor
          Harvard Medical School, Schepens Eye Research Institute
          "Differential Diagnosis of Dragged Retina in Infants and Children"

 12月13日(水)    山田昌和 講師(慶應義塾大学)「眼瞼とオキュラーサーフェス」

●西東京眼科フォーラム(特別講演)
 11月18日(土)   白神史雄 助教授(岡山大学) 「硝子体手術最前線」
    ※本年度より、専門医制度認定事業となります。

 アイセンター設立を契機にオープンした特殊外来も各々少しずつ患者さんが増えてきています。これに伴って朝の勉強会での症例検討も幅広くなってきました。このことは即ち、研修医の幅広い勉強につながります。ご紹介くださる先生方には心から御礼申し上げたいと思います。
 杏林アイバンクが、臓器組織移植センターの一部門としてオープンする日も近くなりました。新しい形のアイバンクをめざします。情報処理室も少しずつ充実しつつあります。ここも私達の夢を実現させたい部門です。(TH)

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