◆ご挨拶 (藤原 隆明) ------------------------------   <1>
◆Faculty自己紹介 (岡田アナベルあやめ)     ---------------- <2>
◆Topic (森村 佳弘・岡田アナベルあやめ)   ---------------- <3>
  経瞳孔的温熱療法(transpupillary thermotherapy)            
  軟性ドルーゼンに対するレーザーの治験について              
◆アイセンター外来スケジュール   ------------------------ <4> 
◆アイセンターイベント情報   --------------------------- <4> 
◆編集部より                                 

ご挨拶
藤原 隆明

 国内初の免震基盤上に建つ杏林大学病院の新外来棟が、平成11年1月4日に開設オープンされたのに伴い、その外来診療部門の最上階(5階)の一画に杏林アイセンターが新設され眼科診療も同時にスタートしました。それから約1年が経過しましたが、お陰様で業務の面でも当初から目指していた方針に沿ってようやく軌道に乗り始めたという感触が得られるようになってきました。
 振り返ってみますとこのアイセンター設立に関する構想は、遡って平成6年(1994年)の春ごろから既に始まったように記憶します。教室のfacultyを中心とした若い諸君たちが、それまでの海外への留学や学会出張のおりに、米国を初めとする諸外国の眼科や耳鼻科など感覚器専門の研究施設を垣間みてきて、それらの充実した設備や内容に羨望の念を抱き、いつの日か自分たちもそうした視覚器専門の臨床およびそれにつながる研究部門からなる施設を持ちたいという夢を多く語るようになったことがその発端だったと思います。それならば夢を単なる果敢ない夢に終わらせることなく、実現に向かって進もうと一念発起し、その年の末にはもう、設立の趣旨から始まって組織図・人員構成に至るA4判用紙11頁に及ぶアイセンター構想を大学側(理事長)に提出する運びになりました。ここにその細部の内容の記述に及ぶ紙数を持ちませんが、要するに、これからも際限なく専門家・細分化していくであろう眼科医療をまたどのように統合しなおして総合的な観点から前進的な医療に繋げて21世紀の医療のあるべき姿を具現していくのか、臨床・研究・教育(卒前・卒後)に携わる大学人としてそれに対する我々の考え方を具体的に述べたものです。この設立の趣旨とアイセンター業務の内容については皆様にも是非ご理解を賜っておかねばならぬ点ですから、本ニュースの中でも順次ご紹介申し上げていく所存です。幸いに当初の計画の大部分が実現され、かくてアイセンターは順調に始動しました。皆様のご指導・ご支援あってこそのこれからのアイセンターです。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

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Faculty自己紹介 

岡田アナベルあやめ

 1999年4月から杏林大学医学部眼科学教室に赴任しました岡田アナベルあやめです。元々米国の生まれ育ちで、1983年にボストンのハーバード大学(生化学専攻)を卒業後、1年間、東京大学(物理化学研究)と上智大学(日本美術・日本語勉強)に留学しました。その後、ハーバードに戻って、1988年に医学部大学院を卒業しました。1988-89年にハーバード附属病院の1つであるMassachusetts General Hospitalで内科インターンシップを行い、1989-92年にもう1つのHarvard附属病院であるMassachusetts Eye and Ear Infirmaryで眼科レジデンシーを終了しました。眼科レジデンシーの2年目に、日本の硝子体網膜サージャングループがMassachusetts Eye and Ear Infirmaryへ見学に来られ、その時に杏林大学の樋田哲夫先生や大阪大学の田野保雄先生にお会いし、初めて日本の眼科について関心を持ちました。その後、東大留学中に知り合った夫と結婚することになり、1992年にボストンから東京に引っ越しました。この時日本での眼科キャリアにチャレンジすることを決心しました。
 最初はぶどう膜炎をもう少し勉強したいと考え、フルブライト財団の奨学金を戴き東京医科大学眼科の臼井正彦先生のところへ留学しました。そこで日本に多いといわれるサルコイドーシス、ベーチェット病や原田病などを多数例経験し、「実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎モデルを用いたサイトカイン療法の研究」により医学博士の学位を取得することができました。次に硝子体手術を勉強するため1998年に大阪大学眼科に移り、田野先生のもとで外科的治療を含め、網膜疾患の治療に参加することができました。
 杏林アイセンターについては、5〜6年前、樋田先生と平形明人先生からいろいろと夢と抱負を聞かせて戴きました。日本でも、アメリカによくある、眼科臨床の幅広い専門分野をカバーし、二次、三次医療の要請に十分応えるとともに、臨床教育を充実させるEye Centerを作りたいというお話は、アメリカの制度に親しんだ私にとっては、非常に興味深いものでした。そして去年の夏に樋田先生と藤原隆明先生にお声をかけていただき、1999年1月の杏林アイセンターの誕生にほぼ合わせて、杏林大学眼科にジョインさせて戴くことになりました。 
 アイセンターでは、月曜日の午前と午後の眼炎症外来(ぶどう膜炎)および水曜日午後の黄斑疾患外来(加齢黄斑変性、脈絡膜新生血管など)を担当させて戴いております。杏林で経験した眼炎症の中で最も多いのは強膜炎、サルコイドーシス、原田病や眼内炎です。強膜炎については、血中抗コラーゲン抗体を測定するプロジェクト、それから炎症による眼圧上昇に対するラタノプロスト(キサラタン)治療についての検討も始めました。黄斑疾患外来では2つの治験が進行中です。1つは、加齢黄斑変性や高度近視に伴う中心窩の脈絡膜新生血管に対する経瞳孔的温熱療法のパイロットスタディーです。もう1つは加齢黄斑変性にみられる軟性ドルーゼンに対するレーザー光凝固の予防治療の多施設臨床治験です。詳しくは、アイセンターの森村佳弘先生による説明(同ページ)をご参照ください。適応になりそうな患者さんをご紹介いただければ幸いです。
 日頃より、患者さんをご紹介いただいている先生方、同窓の先生方には今後ともお世話になることと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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Topics 2つの治験紹介
森村 佳弘 ・ 岡田アナベルあやめ

経瞳孔的温熱療法 transpupillary thermotherapy (TTT)
--脈絡膜新生血管に対する新しい治療

 加齢黄斑変性をはじめ黄斑部に脈絡膜新生血管を生じる疾患に対して、近年様々な治療が試みられていますが、中心窩下に新生血管がある場合、依然予後は不良です。杏林アイセンターではこの秋より、これら中心窩下、特に occult type の脈絡膜新生血管に対する新しい治療法として、経瞳孔的温熱療法(TTT)を始めております。TTTは、瞳孔を通して半導体レーザーの近赤外光(波長810nm)を、比較的大きなspot size (直径0.5〜3.0mm)で60秒間照射するもので、通常の光凝固と異なり、レーザー照射直後の組織破壊ではなく、遅発性の細胞機能の変化により組織の機能不全や萎縮をひきおこします。これにより、網膜に与える影響を最小限にとどめつつ標的組織である脈絡膜新生血管を消退させることが期待できます。もともと脈絡膜悪性黒色腫など、腫瘍性病変の縮小、消退を目的として行われ、効果をあげていますが、最近欧米で脈絡膜新生血管に応用されました。Reichelら(Ophthalmology Oct.1999)の報告では、TTT施行後6カ月から25カ月の経過観察で、16眼中12眼で視力が向上または変化せず、15眼で滲出性変化の減少を認めています。本邦ではまだこの治療を行った例はなく、当アイセンターと大阪大学が予定しているのみです。有色人種での照射条件や効果、適応などについては未知の段階で、これから症例を重ねていく必要がありますが、特別な薬剤を必要とせず、副作用が少なく、照射回数もほとんどの場合一度ですむ為、患者さんへの負担も少ない方法です。これにより脈絡膜新生血管による視力低下に悩む患者さんの予後を少しでも改善できれば、と考えております。

軟性ドルーゼンに対するレーザーの治験について
 軟性ドルーゼンは、滲出型加齢黄斑変性の前駆病変とされており、多発性軟性ドルーゼンの経過をみるうちに脈絡膜新生血管の発生をみることは珍しくありません。これら多発性軟性ドルーゼンの一部にレーザー光凝固を行うことで、軟性ドルーゼンが消失することが報告されており、光凝固によって軟性ドルーゼンを消失させれば脈絡膜新生血管の発生を予防できると考えられるようになりました。このような考えに基づき、現在厚生省特定疾患網脈絡膜視神経萎縮症調査研究班の重点研究事業として、軟性ドルーゼンに対する光凝固の有用性を調べる前向き無作為臨床研究が進行中で、杏林アイセンターもこれに参加しています。対象は、両眼黄斑部に多発性軟性ドルーゼンがみられるか、滲出性加齢黄斑変性(老人性円板状黄斑変性)の他眼に多発性軟性ドルーゼンがみられるものです。両眼性軟性ドルーゼンの場合は無作為に選んだ片眼、滲出性加齢黄斑変性の場合は他眼の、黄斑部耳側の軟性ドルーゼンに光凝固を加え、コントロールとの経過の違いをみるものです。このような全国的規模の臨床試験は、治療のための有力な指針を与えてくれるもので、当アイセンターでも積極的な参加を考えております。先生方におかれましても、主旨をご理解の上、対象となり得る症例のご紹介よろしくお願い致します。

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外来担当表 (2000年4月以降)

 

●アイセンター・オープンカンファレンス

 国内外の先生にインフォーマルな場で臨床、研究テーマについて講演していただくシリーズが去年の7月から開始いたしました。近々予定している講演をお知らせします。外来棟の10階第2会議室で6:30PMから行われます。この講演シリーズはオープンですので、アイセンター外の先生方も是非ご参加ください。
    3月8日 篠崎 尚史(東京歯科大学)「適正なアイバンク活動と移植角膜」
    4月3日 Anthony Adamis, M.D. (Harvard Medical School)
         「Shedding light on diabetic retinopathy」
    5月31日 大鹿 哲郎(東京大学) 「to be announced」
    6月7日 片平 宏(杏林大内科)「最近の糖尿病の診断と治療」

●多摩眼科集談会(特別講演)
    3月25日 岡田アナベルあやめ(杏林アイセンター)
    「眼炎症の最近のトピック(仮題)」

 杏林アイセンターでは、ニュースレターを発行し、日頃患者様をご紹介いただきお世話になっている先生方、同窓の先生方などにお送りすることになりました。スタッフ、特殊外来などのご紹介、進行中の治験や研究について、オープンカンファレンスの日程、外来当直表などを内容として年3回発行する予定です。
 今回第一号をお送りすることになりました。ご意見、ご要望などございましたら、お寄せいただければ幸いです。
 平成11年4月から杏林アイセンターのスタッフとして赴任いたしました岡田アナベルあやめ講師をご紹介いたしました。ブドウ膜炎をはじめとする眼炎症を専門とし、Archives of Ophthalmology, Ocular Immunology and Inflammationの編集委員に指名されるなどすでに国際的に活躍しております。眼科手術、あたらしい眼科の編集委員も長く担当しております。研究面に力を入れてくれると共に硝子体手術も積極的にする強力なスタッフです。趣味の面では音楽を愛しバイオリンが得意。  (HT)